ニ黄卵(イラスト by K)

スーパーでパックに入ったタマゴを買ってきた。
調理しようと、その1個をポンとわったら、黄身が二つあった。

 「 あ、めずらしい、双子のタマゴだ」と、思う。
ここまでは、まあ何と言うこともない話。




その1

主婦を10数年やっていると、たまに買う料理雑誌 (「 オレンジページ」「TANNTO」など)で
同じような投稿を見つけることがある。
10数年前の投書に曰く

「スーパーでパック入りの卵を買ってきた。
1個割ったら中身は双子ちゃんだった。
もう一つ割ったらそれも黄味二つの卵だった。
気になって1パックを次々割ってみたら、全部が黄味二つの卵だった。」

へぇそういうこともあるのかと思った。
1個ならまだ珍しくても、一パック全部の卵が二黄卵では、
鶏の飼育にクスリか何か使ったんじゃないかと思ったりした。
排卵誘発剤とか。
だからその投書が「気味が悪くなった
結んであるのも、それが当たり前の感覚だと思った。


その2

その数年後に似た投書を、やはり 料理雑誌で見かけた。(レタスクラブかなにか)
「〜 1パックの卵、全部が黄味二つの卵だった 〜」
というところまでは同じ趣旨。

ところがそのあとが異なる。
「 ラッキーでした」

がぁああああああぁぁぁぁんんんんんん
わからない。
その感性がわからない。
何かを「変」と感じるかどうかは、直感的な感性だ。
理屈ではない、言葉が先にくるものではないが、
自然界の確率からいって異常だと思わんのかっ!?

たぶんその投書者に
「 おかしいと思わないの?」
と聞いたら
「 なにが?」と
聞き返されるだろう。

以前、アメリカの一地域で、生後間もない女児の赤ん坊たちに生理が始まる事件が起きた。
原因は、コンビーフの缶詰だった。
飼育期間の短縮目的で牛に使われた成長ホルモン剤が、牛肉になっても残留していて、
コンビーフ缶を食べた女性のおなかにいた胎児がそのクスリの到着点だった。
そして生まれてきた女の赤ちゃんに生理が始まったという。
20年くらい前(新聞のスクラップが趣味の子供だった頃に)読んで驚いたので覚えている

私が子どもだったとき、高度経済成長期のツケが出て、公害問題
叫ばれだしたので、自分はそれなりにイシキがある方かと思う。

だから「ラッキーでした」の投書を目にしたときは、今の若い人(なんかこういうい言いかたはイヤ〜であるが
他に言いかたが見つからない)との 食の安全に対する感性?の違いに頭を抱えた。

(別に私が頭を抱える必要は無いが、私の感覚が古いんだろうかとか、
やっぱり自分は少数派なのかとか、こういう言葉の通じない人はイヤだなとか色々…)


その3

二黄卵のパックが何故できるか。
についての理由がわかったので、ここに引用する。

実はこれは、鶏の生理と養鶏所の飼育出荷システム上、ありうることだそうだ。
二黄卵に遭遇する時は、続けて出てくることが珍しくないと聞く。

「 (前略)そこで、まず排卵誘発剤の使用を疑ってみたが、スーパーなどにも卵を卸している
全農鶏卵によれば、「使用していない」という。
生活クラブの提携生産者・去ュ川グリーンファームの丸尾敏晴さんは「鶏は卵を産んで次の
卵を産むのに26時間かかります。そのうち20時間は卵殻をつくるのにかかっています。
だから排卵誘発剤のような薬を使っても殻ができないので、意味がない。
このため薬自体が開発されていない」 と説明してくれた。」


 「双子卵は、生理不順によって卵巣から2つの卵子が一度に出て、ひとつの殻の中に入ってし
まったものだ。生理不順が起きやすいのは鶏が卵を産み始めた初期の頃で、双子卵の発生も
産み始めから4〜5日の間に集中する。」

 「青森県養鶏試験場の調査では、この時期の双子卵の発生率は3%だった。つまり1万個卵が
産まれれば、統計上は300個が双子卵ということになる。 また、この頃は普通の卵(通常卵)も
ほとんどが小玉だ。このため、卵を産み始めた4〜5日間にLサイズやLLサイズがあれば、
双子卵である確率は高いという。」
 
「次に飼育システムだが、現在の養鶏は鶏舎全体の鶴を一度に入れ替えるオールイン・オール
アウト方式だ。鶏舎ごとに同じ飼育日数の鶏を使うので、産み始めの時期はほとんど一緒。
産まれた卵は集卵されて重量別の選卵機にかけられるが、産み始めの頃の卵はM・L・LLと
サイズが大きくなるほど、双子卵が集まってくる。」 

(中略)

「こうした要素が重なると、1パック中すべてが、もしくはその多くが双子卵という
可能性がでてくる。」

生活クラブ発行「生活と自治」1998,8月号
”食べ物なぜなにホットライン”より引用


そうか、卵のパックで双子卵が続いて出てくることは、おかしなことではなかったのか。
(しかし、先の「ラッキー!」 の投書者はそれをわかって言っていたわけではないみたい。)

なお、「全農鶏卵では双子卵の検卵を行って」いるが、「 生まれた直後は双子卵でも卵黄が
くっついていることが多く、見分けが難しい」そうだ。
通常卵でも双子卵でも食べる上では変わりないそうだが、それでも検卵を行っている理由については、
「かつては得をしたと双子卵は喜ばれたんですが、今はすぐに何か薬を使っているのでは、と
疑われてしまうからだそうだ。

今の食事情に多少なりとも不安を持つ人なら、鶏の飼料になにか変な薬を使ったのではないかと
疑うのも当然というべきかと、ちょっとほっとした。

( 00,8,06)
ファイル作成術
引用した部分について/「生活と自治」の頁をスキャナーで読み込み、活字の部分をテキストに変換して貼りつけた。しかし双子卵の双が、温とか敦に変換されてたリするのを、チェックして直すのがちょっと面倒。
もしも生活クラブのホームページに双子卵のファイルがあったなら、CAPコーナーで毎日新聞の過去の社説のファイルに直リンクを張ったように、双子卵のファイルに直リンクを張っていただろう。