BOOK
言わずと知れた手塚治虫のベストセラー「ブラックジャック」
そのマンガに出てくる症例研究の本。しかし、ちまたによくある謎解き本ではない。
1巻と2巻の表紙/私は本を紹介するとき、自分の判断で「表紙」については無断転載してます。後日、こういうところに載せましたというファクスを版元に送ろうとは思ってます。 「ブラック・ジャック・ザ・カルテ」
1,2
海拓舎 発行
定価 ( 本体1500円+税)

B・J症例検討会 



「B・J症例検討会とは、B・Jに影響を受け、医学の道に進んだ30〜40代の現役医師により結成された日本医師会未公認組織である」(第1巻カバーより)
「B・Jが関わり施術した症例につ検討報告し、報告集を提出すること」と「B・Jをこよなく愛してやまない現役医師の発掘とB・Jの偉大さを広く布教することを今後の主な活動とする」
B・Jのサイトをまわっていて、この本の紹介に出会った。いやもう、そういうお医者さん達が本当にいるというだけでも なんだか嬉しかったので、図書館で検索してみた。
すぐモニターに出てきた。わ、そこの図書館で所蔵してる、え、第2巻まで出ているんだ、あー2冊とも貸し出し中だ。で、予約を入れ、2週間くらい待ってから手にした。

最初に奥付けを見る。第1巻は 2001年8月初版、10月第4刷発行。第2巻は2001年12月初版、2002年1月第3 刷発行だった。え、まだ新しい、それに売れてるみたいだ。と、思いながら読み始めた。

*感想*
アニメや特撮ドラマを科学的に研究し(?)、ベストセラーとなった『空想科学読本』(著者・柳田理科雄)のような本の系統かと見当をつけて手にしたが、あげ足取りのような本ではない。医者でもある作者の手による 作品内の症例や施術について、現役のお医者さんが至極 真面目に、なおかつ遊び心を持って記述している…すごい!。

手塚治虫が御存命だったら、本の推薦文を書かないわけにいかないのではないか。
本書の 6割方を占める 「第1部 症例カルテ」は、正直言って医療の門外漢には全部は理解できないが、「そうか、これって今でいう”心のケア”だったのか」と発見するものもある。また、「狂犬病の患者を演じるのはバンパイヤの、狼人間のトッペイ君」などというマニアックなことは書いてない。が、「 えー!狂犬病ってそういう病気だったの!?あの話のハッピーエンドに見えたラストは本当はこういうことだったの!!」と、お話の読後十数年後にして はじめて知った真実にショックを受けた解説もある。
そういう、手塚氏が読まれたらきっと痛いであろう症例検討も、少なからずある。
しかし 本当にB・Jを好きで、読みこんでいるんだな と感じられて、ファンとして、嬉しい。
惜しむらくは…

B・Jの愛した如月恵の話が「症例カルテ」に取り上げられていなかったのが残念。1にも2にもなかった。

小学生で初めてその話を読んだとき、「本当にそういうものなの?」と思ったので気になる。子宮と卵巣を切除すれば「女でなくなる」? 切除したとたんに「 好き」という「気持ちはかききえてしまう」ものなのだろうかと。
如月さんはたまたまそういうヒトなのかもしれないが、一般論として人の心と身体はそういうものであると思わせるような描き方はまずいのではないかと。これはないんじゃないかと思っている。(子宮で恋をするなら、「 花衣夢衣」(津雲むつみ)のマンガは成り立たないな…余談デス)。

富士見産婦人科病院という名前だったか、単純に言えば、病気だと偽って健康な子宮を切り取り金もうけをしていたという病院が大きな社会問題になってマスコミをにぎわせたことがある。子宮と卵巣を取れば男になるというものではないだろうが、生理がなくなれば快適だろうな…と思っていたら、分泌されなくなった女性ホルモンを補うために(それがないと老化が早まるそうで)、毎月ホルモンの注射を受けに医者に通わなければならなくなった…という話を聞いたこともある。

女性ホルモンが「女らしさ」に関わるものだとは本で読んだりしたが、そもそも「女らしさ」の定義についてもあいまいだったりする。そういった心と身体の関係や予後についての症例カルテを読めたらと期待している。(B・J症例検討会に女医さんはいないのかな?いや別に 男性が解説してくれてもいいけど)

02.3.8 ( K)
(余談/手塚治虫邸は東久留米市内にあります。今もご家族の方が住んでいるそうです。)