■ 掲示板の説得術考

その意見が正しいか間違っているか、自分の意見と同じか反対か

…と いうこととは別に、その人がどういう言い方をしているのか、 相手を説得しようという気でわかりやすい言葉で語っているかどうかという態度がけっこう重要だったりすることもある。話の内容の是非よりも話し方によって、こちらの気持ち、何をどう判断するかどうかが左右される場合もある。


人間は頭で判断することと、心で感じることが一致するとは限らない。
(例) ある小学生曰く
「『お父さんはうだつの上がらないサラリーマンでダメな人間』と、お母さんは言う。ぼくもその通りだと思う。だけど僕はお父さんが好きだ」


そういえば、オウム真理教 ( 現在「 アレフ」に改名。ここでは過去の話なのでオウムにする。)の事件でも、地下鉄サリン事件の前に、オウムの広告塔の上祐氏におっかけファンができたことがある。
これは、TVの報道場面で、オウムを批判する関係者達が大勢で彼一人をつるし上げるような画面が流れたためだ。決してオウムの味方をするわけではないが、もしもオウムに関する予備知識が何もなしに、その場面を、音声を消して見た場合、怒りの剣幕の多勢よりも、( 見方によっては)それを冷静に一人で受けて立っている(ように見える)上祐氏のほうがカッコよくて正しいのではと衝動的に思った人がいてもおかしくはないと思う。若い女の子の追っかけファンができたというのも、ちょっとうなずける話だと思うが、もちろん願わくばその女の子達には、その後、憑き物がおちていてほしいと思う。

「大きい声で話す人より小さい声で 。」「感情に高ぶった声でなく静かな声で」相手に話りかける人の方が 信用を得やすいし、説得力も増す。が、BBSという活字だけの場所でも、そういう書き手の声のトーンが読み手に伝わるのは面白いと思う。

どこのBBSにも、「自分にも何か手伝えることはあるかしら」と、ちょっとした好意と好奇心で昨日今日初めて立ちよる人もいるわけで、そういう人が、ここは こわいところだときびすを返してしまうような話し方は避けたい。避けてもらいたい。

しかし 「話の内容の是非よりも話し方のほうが大事なのでは」という主旨に取られると、必ず予想される反論がある。

「オウムやヒトラー、ゲッペルスの味方なんですか?」と。

私はナチではないが、大声で怒鳴りつけるより、小さい声で話すほうが かえって相手の注意をひくというのなら、(労少なくして益多しのほうが)、それにこしたことはないのではないかと思う。

「あなたがそう感じているだけで、他の人全てが私とあなたと同じように感 じているとは限らない。話し方が人それぞれなら、聞くほうもそれぞれでしょう。
人間、何かの為に一生懸命になるときは、つい力が 入ったり、テンションが高くなったりするものでしょう。私は、相手がどんな人であれ私のタメに一生懸命なんだなと思えば相手の厳しい言葉も優しく感じることもあります。」

それはもちろん。しかしこれはその意図に反して、あまり反論にはなっていないと思える。というのは、「相手が私のタメに一生懸命だと思えば」というのは、こちらが「人間は理性よりも、感情で動かされる動物なのでは」と言っている点と同じ、もしくは近いものがあるのではないか(と思うよ)。相手の自分に対する誠意を感じたから、厳しい言葉も受け止めることができたというのは、話の内容で動かされたわけではなく 相手の態度に説得されたといっているようにも聞こえる。

しかし上のような説得は対面(face to face)での場合に限定されるのではないか。
BBSにおいて、匿名の相手が匿名の相手のことをいかに思いやりをもって発言してくれているかどうかを、その言質からも言外からも読み取れというのは、難しい注文ではなかろうか。


(笑)などを書きこみに付けるのは、冗談で言った言葉をちゃんと冗談でうけとってもらうための交通整理の道路標識みたいなものだというコラムがあったがその通りだと思う。

対面で言葉のやり取りをする場合は、相手のちょっとした顔色を読んで、自分の言葉が通じてないと思えば説明を補ったり、なにか誤解されてるみたいだと思えば言葉をその場で取り消したりが出来る。しかし、BBSは、そういう言葉を足したり、引いたりができない。

BBSは難しい…というより、他人を説得できるなどと考えるほうが間違いなのではないか、おこがましいはのではないかと最近思うようになった。説得したと思っても、お互いそれぞれの誤解に基づいて気持ちよく別れたというだけに過ぎないのではないかと。

というわけで
オンラインのコミニュケーションについての 私の最近の信条は
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自分の話が相手に伝わったと思ったら、諸手を挙げて万万歳しよう。
そして、もしも運悪く、意見の合わない人と出会ってバトルになってしまったら、そしてどう考えても自分に一方的に非があるとは思えないときは、こういう相手とオフラインの世界で 『 嫁、姑 というような最悪の形で出会って(高橋留美子「 Pの悲劇」のセリフだったかな?)』しまわなかったことを、神に感謝しよう。
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妄言多謝

(02,3,18)

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