本の話 

2. 「今ここに生きる子ども・ポケットの中の野生」  著・中沢新一
1.  「アニメの醒めない魔法」 著・高田明典


 「 シリーズ 今ここに生きる子ども・
       ポケットの中の野生 」         
著・中沢新一  岩波書店97年1200円+税
ポケモン評の頁で題名を出したので、こちらでちゃんと本を紹介します。
興味がある人は図書館で注文するに留めたほうがいいです。買ったら後悔します。

 この本は、どういう読者を想定して書かれたのか、わかりにくい。
 小学生の子を持つ親を対象にした「お母さん塾」(‘99春号)(普段は買わないものを、ついふらふらと、初めて買ってみた)にも、「お母さんのためのポケモン学」としてこの本が紹介されていたが、要点を紹介したその記事だけで十分だと思った。
  実際に図書館で注文して読んでみると、
 これは学者仲間にむけて書かれたのか、ポケモンのRPGファンか、アニメファンにむけて書かれたものなのか、ぜんぜんはっきりしていない。 (編集者が悪いのかなぁ…)

 
 「贈与」「交換」「冗談関係」…など宗教学(だと思う)の言葉についての解説が挿入されていれば、もっとわかりやすいだろうに…と、残念でした。 


     「アニメの醒めない魔法」 
            著・高田明典
 発行:PHP研究所   定価1400円(本体1359円)
          (あ、消費税3%の頃の価格でした。)
   95年10月第一版
 間接的な知り合いの書いた本なので読み始めたが、「ああそうか、そういうことだったのか」と、発見することが多数あり、とても面白かった。多分、このHPのポケモン考ほかを面白く読めたという方なら、面白く読めると思います。
  文章は平易でわかりやすく、個々のアニメの物語の表の構造と裏の構造を示しながら、その意味や影響力について、解説している。
 < 例 > 数年前、ドラえもんの最終回について、小学生の間ではやった噂「のび太は実は病院のベットで昏睡している病人であり、ドラえもんは昏睡状態ののび太が見た夢だった」 を ご存知でしょうか。

 「だれでも、「ドラえもん」(欲望を実現する科学)を独占する「のび太」(ひいきされる子ども)はうらやましい。
  しかし、のび太の様に、情けない存在にはなりたくない。のび太はドラえもんがいて、「他の者より幸福になれる」のではなく、やっと他人並になれる存在だから。また、物語の終わりには、科学の力に頼ったことに対する軽いしっぺ返しが用意されているから、「のび太」の存在は許容 されていた、はず…

   
 だから最終回の噂の訴求力は、視聴者が、のび太への戒めが甘いと感じていることの表れ、子どもの寛容さというキャパシティが狭まっていることの表れ …などなど」
 <ひいきされたいという気持ち  ドラえもん>
 の項目の末尾の要約

そういえばその頃、サザエさんの最終回の噂も流れた。

  著者は1961年生まれで、77年の宇宙戦艦ヤマトの映画に徹夜して行列をつくった、アニメブームの走りの世代。この本で取り上げているアニメにもそれがみてとれる。
 「ストーリーの構造分析と,それにもとづく構造解析」などと書いたら、難しく聞こえるが、この本でのアニメの読み解き方には、一定の手順やルール,目の置き所(種明かし)がある点も解説されている。
  ちまたの謎解き本と違う点は、こういうツールの使い方が、系統立てて確立してあることと、アニメの影響力を真摯に考えていること、自分と同じアニメファンとアニメの作り手にむけて書かれていること。

  とはいえ、物語の登場人物や事件が何を暗喩しているかを吟味するのは、分析する人(高田氏)の直観力なので、読者は100%納得できるとは限らない。が、ツールの使い方がわかると、他のアニメにも応用がきき、これまで見えなかったものが見えたりする発見が多々得られました。

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