タヌキ日記
「 ちがう ちがう AはAだ タヌキじゃない!!」 それからも、Aの親(私)は気が向くとAに、おまえはタヌキだと言い聞かせた。 「 ほんとはね、Aはポンポコ山に住んでいたタヌキだったのに」 「 ちがう!!」 「 山に遠足に来た人が忘れて行ったお弁当やお菓子の残りを食べて」 「 ちがう!!」 「 この世にはなんておいしいものがあるんだろうと感動して」 「 ちがう!!」 「 一生懸命働きますから、どうかこの家においてくださいと…」 「 ちがう!!ちがう!!Aはタヌキじゃない!!」 (自己の基盤を揺るがされた3歳児は、やっきになって否定する) …またあるときは 「言うこと聞かないならポンポコ山に帰りな!」 「ちがう!! Aはタヌキじゃないからぽんぽこ山なんて帰んない!!」 …別のあるときは 「ほんとはタヌキだってこと、お友達にバレないようにしようね!」 「ちがう!! Aはタヌキじゃない!ばれない!!」 「そっか、ばれてないなら良かったね〜」 「ちがう!!ちがう!!ちがう〜!!!」(泣きそう) と、ことあるごとにAをからかう…じゃない、鍛えたのだった。 が、あるとき私は、反抗するAがかわいそうになってこう言った。 「 そうだよね。Aはタヌキじゃないよね。本当は人間だよね」 しかし、言われたAは激怒して言った。 「 ちがう ちがう AはAだ ニンゲンじゃないっ!!」 腹がよじれるかと思うくらい笑い転げる親(私)に向かって、Aはなおも言った。 「 Aは ニンゲンじゃないんだからね!!」 追記 その後… 「Aは人間なんだよ」 「 ちがう!Aはニンゲンじゃない!」(爆笑) さすがにこれは、TORAUMAになってはまずいと思い、よくよく言い聞かせた。が… (2000,4) |